神戸市は、大都市でありながら「海」と「山」がすぐそばに迫る特徴的な環境で、市街地周辺も含め自然にあふれる風景がご覧いただけることが大きなポイントです。
こちらでは、神戸市の市域について、緑(木々など)に覆われている割合を示す「緑被率」という観点から、その状況を見てきます。
緑被率とは?
緑被率(りょくひりつ)は、大まかに言えば、その地域において「緑(草木)に覆われている範囲の割合」です。
すなわち、山が多い自治体では緑被率は高くなり、逆に平地にあって山がない自治体では緑被率は低くなります。
含まれる要素としては、通常は自然に見られる森林などが最大の要素ですが、「公園の緑」・「農地(田畑)」・「草地」・「街路樹」といった人工的な要素もカウントの対象となります。更に、池・沼・川といった場所も区分の性質上カウントの対象となります。そういった状況から、例えば東京・大阪といった一般的な自然由来の緑地がほぼない地域であっても、数字はゼロになりません。
なお、緑に覆われる範囲の割合を示す区分(概念)としては、下記のようなものがあります。
区分 | 意味 |
---|---|
緑被率 | 一定の広がりの地域(主に自治体単位など)で緑に覆われる範囲の割合 |
緑地率 | ある敷地において、その敷地面積に対し緑に覆われる範囲の割合 |
緑視率 | ある視界で見た場合に、その領域に対し緑に覆われる範囲の割合(測定は難しい) |
神戸市の緑被率
緑被率については、国や自治体の統計データとして、毎年全国的に統一した内容のデータが集められている状況にはありません。
神戸市の緑被率については、2005年の数字が神戸市の制定する「グリーン神戸21プラン」に記されています。当時からの変化としてはは、舞多聞地区をはじめ一部の開発によって緑被率が一定程度低下している可能性がありますが、歴史的に見た場合、市内の大規模開発の大半は2005年以前に行われているため、現時点における状況と極端な違いが生じている数字ではないと言えます。
市域全体
区分 | 緑被率 | 総面積 | 緑被面積 |
---|---|---|---|
市域全体 | 68.5% | 55,607ha | 38,081ha |
うち市街化区域 | 32.9% | 20,440ha | 6,720ha |
うち市街化調整区域 | 89.2% | 35,167ha | 31,360ha |
神戸市は、土地利用の性質を問わない場合、市の面積のうち約3分の2が緑被面積にあたる、非常に緑に恵まれた環境を持つ都市です。
市街化区域に設定された場所でも約3分の1が緑被地で、主にニュータウンにおける緑地や公園の多さなどが、まちなかの緑の多さをもたらしています。
市街化調整区域で見た場合、緑の占める割合は9割近くに達します。神戸市の場合ため池なども多いですので、そういった要素も含めてみると、身近な自然環境が占める割合は一層大きくなります。
市街化区域のみ
地域 | 緑被率 | 総面積 | 緑被面積 |
---|---|---|---|
北区 | 55.0% | 4,277ha | 2,350ha |
須磨区 | 39.7% | 2,154ha | 856ha |
垂水区 | 37.0% | 2,700ha | 1,000ha |
西区 | 35.6% | 3,868ha | 1,375ha |
市全体 | 32.9% | 20,440ha | 6,721ha |
灘区 | 20.5% | 1,199ha | 246ha |
長田区 | 19.9% | 973ha | 194ha |
東灘区 | 16.7% | 2,304ha | 385ha |
兵庫区 | 11.8% | 930ha | 109ha |
中央区 | 10.0% | 2,034ha | 203ha |
市街化区域の緑被率は、北区など郊外部で高く、中央区など都心部ほど低い傾向が見られます。
北区の場合は、実際には現時点で開発がなされていない地域(山林になっている場所)について、市街化区域に編入されている場所が少なからず見られ、その部分が加わるため数字が特に高くなっています。そのため、一般的な市街地の面積に対する数字とはややかけ離れている点には注意が必要です。
都心にあたる中央区は、ビル・マンションなどが高い密度で建っている地域のため、緑被率は最も低くなります。但し、それでも1割は確保されています。
他都市との比較(限定的データ)
政令指定都市 | 緑被率【市域全体】 |
---|---|
京都市 | 83.2%(複数年次の調査データが混在) |
浜松市 | 81.1%(2017年) |
広島市 | 78.8%(2019年) |
仙台市 | 78.4%(2019年) |
神戸市 | 68.5%(2005年) |
【2番目に低い】名古屋市 | 21.5%(2020年) |
【最下位】大阪市 | 15.8%(2012年) |
政令指定都市 | 緑被率【市街化区域】 |
---|---|
神戸市 | 32.9%(2005年) |
仙台市 | 26.3%(2019年) |
京都市 | 25.8%(2004・05年) |
さいたま市 | 23.3%(2010年) |
浜松市 | 22.1%(2017年) |
出典:
京都市:『京都市緑の基本計画』
浜松市:『浜松市緑の基本計画』
広島市:『広島市みどりの基本計画』
仙台市:『仙台市みどりの基本計画』
神戸市:『グリーン神戸21プラン(神戸市緑の基本計画)』
名古屋市:『令和2年度緑の現況調査』
大阪市:『新・大阪市緑の基本計画』
さいたま市:『さいたま市緑被現況調査報告書』
神戸市は、政令指定都市の中で見た場合、市域全体の緑被率は高めですが、更に山地に覆われた区域が多い都市は、神戸市よりも高い数字となっている都市があります。大阪市のように平地かつ市街地が大半を占める地域では緑被率が極めて低いなど、都市の性質によって緑被率には大きな差が出ます。
神戸市は、分厚い山地として六甲山地・帝釈山地などがある一方で、京都市における丹波高地・静岡市や浜松市における南アルプス一帯として見られるような、市域のかなりの部分を覆い尽くすような山地はありません。むしろ、田畑・ため池・里山などが目立つ環境のため、単に高い緑被率であるのみならず、「多様な地理的環境」が特色となっています。
一方で、市街化区域の緑被率は政令指定都市の中では特に高い水準です。都市計画上の位置づけにより、神戸市は高い数字となりやすい状況がある点などを加味しても、他都市と比べ市街地一帯の緑が極めて充実した環境にあることは間違いなく、「親しみやすい自然、緑」にあふれた特徴あるまちとなっています。
内容のまとめ
・神戸市は緑が占める割合を示す「緑被率」が高い傾向を持つ都市
・市街化区域で見ると、郊外の区で緑被率が高く、都心部で低い傾向がはっきり見られる
・市街化区域の緑被率は政令指定都市でも特に高く、「身近なみどり」が充実した特徴を持つ