近畿地方は、都市部や内陸部はどこでも「夏はとても暑い」地域です。一方で、地域によって気温にはある程度の違いが見られることも確かで、どこでもいつでも同じ気温という訳ではありません。
こちらでは、京阪神、すなわち京都市・大阪市・神戸市・京都市の「暑さ」について、具体的なデータも確認しながらその特徴・傾向を比較していきます。
気象データ(平年値)から見る
項目 | 6月平均気温 | 7月平均気温 | 8月平均気温 | 9月平均気温 |
---|---|---|---|---|
京都地方気象台 | 23.3 | 27.3 | 28.5 | 24.4 |
大阪管区気象台 | 23.6 | 27.7 | 29.0 | 25.2 |
神戸地方気象台 | 23.4 | 27.1 | 28.6 | 25.4 |
項目 | 6月平均最高気温 | 7月平均最高気温 | 8月平均最高気温 | 9月平均最高気温 |
---|---|---|---|---|
京都地方気象台 | 28.1 | 32.0 | 33.7 | 29.2 |
大阪管区気象台 | 28.0 | 31.8 | 33.7 | 29.5 |
神戸地方気象台 | 26.7 | 30.4 | 32.2 | 28.8 |
項目 | 6月平均最低気温 | 7月平均最低気温 | 8月平均最低気温 | 9月平均最低気温 |
---|---|---|---|---|
京都地方気象台 | 19.2 | 23.6 | 24.7 | 20.7 |
大阪管区気象台 | 20.3 | 24.6 | 25.8 | 21.9 |
神戸地方気象台 | 20.6 | 24.7 | 26.1 | 22.6 |
項目 | 夏日日数 | 真夏日日数 | 猛暑日日数 | 熱帯夜日数 |
---|---|---|---|---|
京都地方気象台 | 142.6 | 75.8 | 19.4 | 27.2 |
大阪管区気象台 | 143.1 | 74.9 | 14.5 | 41.5 |
神戸地方気象台 | 130.1 | 57.9 | 4.7 | 46.8 |
内陸特有の酷暑が特徴の「京都」
気温のデータをそのまま見た場合、猛暑日が最も多いという意味で、京阪神で最も暑いのは「京都市」です。気温は状況によっては40℃近い数字となることすらあります。
京都市は、大阪市・神戸市と異なり、海から30km以上も離れた場所にある典型的な「内陸都市」です。
昼間の気温は、海風(海から吹くやや涼しい風)の影響によって左右されますが、京都市は海風による影響は受けにくいため、照りつける日差しによって地表が熱されていくと、その熱がそのまま気温として反映されやすい状況となります。
加えて、京都市は南側を除き山に囲まれた「盆地」地形です。京都盆地一帯では、山の地形の影響で「熱い空気が循環する」ような状況、すなわち実質的には「熱が溜まる」ことになり、気温が上がりやすい状況となります。
なお、京都盆地は都市化が非常に進んだ場所ですので、建物などの影響で「ヒートアイランド現象」もはっきり見られ、内陸部ながら、朝晩もそれほど気温が下がりません。寝苦しい夜となるケースも多々見られます。
海風の影響を受け猛暑がやや減る「神戸」
気温のデータから見た場合、猛暑日が少なめという意味で、京阪神で最も暑さが「まし」なのは「神戸市」となります。
神戸市の場合、京都市とは全く異なり、南側を直接「海」に面しています。その日の風向きにもよりますが、夏の昼間には海からの風(海風)が入りやすい日も多く、気温の上昇はやや抑えられます。
海風が涼しい理由は、海水と陸地の物理的な性質の違いによって、海上では1日の気温差が小さくなり、昼間には陸地と比べ温度の上昇が大幅に抑えられ、結果として京都のように40℃近い猛暑になることはほぼありません。
但し、神戸市が「涼しい」と言えるかと言うと、30℃以上の暑さは当たり前であり、時には猛暑にもなりますので、少なくとも一般的な「神戸のまちなか」は涼しい地域とは言えません。あくまでも「京都よりはまし」といったイメージで捉えて頂くのが無難です。
加えて、変化が小さい海水温の影響を受けるため、朝晩の気温はむしろ高くなり、日本有数の「熱帯夜の多い都市」となっています。暑さが抑えられるのは昼間であり、朝晩はむしろ寝苦しい環境となりやすい点もおさえておく必要があります。
かなり暑いが地域差も目立つ「大阪」
大阪市については、猛暑日も多ければ熱帯夜も多く、基本的に「かなり暑い」地域と言って差し支えありませんが、大阪市は市内でも「沿岸部」と「内陸部」では気温の違いがかなり大きい場合があり、同じ市街地でも一概には特徴が述べられません。
具体的には、海に近い地域は神戸に近い環境となり、やや涼しい海風が入りやすいため、猛暑となる頻度はある程度減ります。とりわけ舞洲・夢洲・咲洲といった海上の人工島では、その傾向は明らかです。
逆に、平野区・生野区・城東区・鶴見区・東淀川区といった海から比較的遠い地域は、内陸型の非常に熱されやすい環境となり、建物の影響で夜間も熱が溜まりやすいため、1日を通しての暑さが特徴となり、日によっては京都より暑くなることすらあり得ます。
梅田・難波など都心部一帯については、地理的には海風がある程度入る環境である一方、高層ビルに遮られるといった影響もかなり大きいため、全体としては神戸より京都に近いような暑さが特徴と言えるでしょう。
市街地以外の状況は大きく異なる
京都市・大阪市・神戸市といっても、基本的に「市街地での比較」は成り立ちますが、それ以外の地域の比較は容易ではありません。
大阪市については、事実上市街地以外ありませんが、京都市・神戸市には分厚い「山地」があります。
例えば神戸の六甲山上エリアは、気候は「東北」のような寒さ・涼しさが特徴で、京阪神の「暑さ」という区分では議論出来ず、むしろ「避暑地」そのものとなっています。また、六甲山上ほどの標高ではなくても、標高が比較的高い北区内(例:鈴蘭台・有馬温泉周辺など)では、一般的な市街地も含め、京阪神エリアの平均的な気温と比べると明らかに低い(涼しい)特徴があります。
京都市内でも、京北・花背方面をはじめ山間部では、気温が上がることはあるものの、京都市街地で見られるような極端な暑さは見られません。比叡山のような標高が特に高い場所ではなおさらです。
標高などに応じて見られる気温差は、京都・大阪・神戸の市街地同士で見られる気温差よりもはるかに大きいため、実際には「各都市の違い」よりも、「都市内の地域による違い」の方が体感的に重要と言える点は確認しておく必要があるでしょう。